あーたんの読書ブログ

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読書感想文#1『異文化理解力』エリン・メイヤー

『異文化理解力』エリン・メイヤー


 

今の会社に入ってから、様々な国の出身者と初めて働く経験をさせてもらっている。仕事を通してグローバルなメンバーたちとやり取りをしたり、議論する中で、よく不思議に思うことがある。「なぜこの人はこういう考え方を、判断を、行動をするんだろう?」と思うことは日常茶飯事だ。

 

ただ本書を読むまで、自分がそう感じた時の他人の言動の多くが、実は文化に根差したものだったことに私は気づいていなかった。「違い」はその人の「性格」だろうと捉えていたのだ。もちろん文化的な影響はあるだろうとは予想していたものの、何が文化で何が性格かを見極める知識がなかったので、そのように考えていた。

 

本書は、異文化交渉・異文化マネジメントに焦点を当てた組織行動学の専門家がグローバルに働くすべての人へ向けて異文化を説明した本である。

私がこの本を読む目的は、複数の文化出身者(日本・アメリカ・ドイツ)が所属する自分のチームについてさらに理解し、それに合わせた対応ができるようになることだ。

 

著者は大規模な調査を行った結果、8つの指標を使い、様々な文化差の説明をしている。

このうち、自分のチームメンバーの文化に関連して印象に残った4つの指標について要約する。

 

  • コミュニケーション方法はローコンテクストか、ハイコンテクストか

ローコンテクストの文化(アメリカ・ドイツ)では、いいコミュニケーションは明確でシンプルな表現である。言葉は額面通りに伝え、額面通りに受け取る。ハイコンテクストの文化(日本)はいいコミュニケーションは空気を読むという言葉に代表される通り、含みやほのめかしで伝えるものである。

二つの文化が含まれるグローバルチームでは、ハイコンテクスト出身者が、ローコンテクストのスタイルのコミュニケーションに切り替えることが推奨されている。明確で含みのない表現を意識することである。明文化することも有効。ローコンテクストの文化ではあらゆるもの(フィードバック、議事録なども)が明文化される。ローコンテクストの文化ではコミュニケーションで問題が起きた時は、受け取る側ではなく伝える側の責任(伝え方が悪い)と考えられる。

 

  • 評価方法は直接的なネガティブフィードバックを行うか、間接的なネガティブフィードバックを行うか

直接的なフィードバックが行われる文化(ドイツ)では、ネガティブなフィードバックは単刀直入・正直に行われ、グループの前で個人が叱られることも許容される。間接的なフィードバックが行われる文化(アメリカ・日本)では、ネガティブフィードバックは基本的に一対一で行われ、やわらかくさりげなく、ポジティブメッセージを交えながら行われる。

アメリカ人へ批判をするときの注意点としては、必ず最初にポジティブなコメントを言ってからネガティブなフィードバックをする。またポジティブとネガティブのバランスをとる(今日はほめて明日は批判を伝えるなど)。さらに、文化の観点から自分の行動を説明しておく(例:自分はフランス人だが、フランスではあまりポジティブなフィードバックはしないのが普通だ、など事前説明しておく)のも有用である。

ドイツ人への批判は、率直であることが評価・感謝されるので率直に伝えてもいいが、間接的な文化の人はこのやり方をとると往々にして行き過ぎるため、直接的な文化の人のやり方を真似するのは良い案ではない。

 

  • 説得の方法は原理優先か応用優先か

何かを説明したり、説得したりする際の思考法は、ドイツ、アメリカ、日本で異なる。

原理優先の思考法(演繹的思考)の文化(ドイツ)では、原理を重要視するため何かを説明するときは「なぜ」そうなのか、理論的概念、一般的原理の説明をする。いきなり結論や提案から話すことはなく、諸条件や結論に至った過程を説明してから結論に至るのが正しいという信条がある。

応用優先(帰納法的思考)の文化(アメリカ)では、実用性に重きを置くため提案から始める。そしてそれを裏付ける例をたくさん挙げたあと、普遍的な結論へと至る。

包括的思考の文化(日本)では、マクロからミクロに考えるため、全体像の説明をすることが重要。

多くの人はどの思考法も使うことができる。ただ、どちらを習慣的に使うかは自身の文化や教育によって影響されているので反対の思考法に慣れている人と仕事をすると問題が起こりやすくなる。

 

アメリカとドイツと日本は意思決定方法がそれぞれ異なる。

合意の文化(ドイツ)では、意思決定は全員の意見を聞くため、決断まで時間がかかる。ただ決断したらそこから修正や変更などをしない(決断は最終決定という意識)ので実行は早い。

トップダウンの文化(アメリカ)では、上司一人が決めてそれに従うことが多い。アメリカは、リーダーシップとしては平等主義(リーダーもメンバーの一員と考える)であるが意思決定は実はトップダウン。そのため意思決定は早く、あとで修正したり変更したりする。はやく決めて実行しながら考えようという姿勢。

日本はこの二つの例外で、階層主義だが超合意主義。稟議や根回しという言葉に現れるとおり、会議の前にすでに話しあいがたくさん行われており、結論が決まっていたりする。

グローバルチームにおいては、最初の段階で意思決定の方法について話しあい、合意をとることが重要。

 

本書を通して、単に「性格」の違いだと思っていたチームメンバーの言動が文化的なものであったことに気が付くことができた。自分とは異なる考えや行動を目にしたとき、人はそれは変だとか、やり方について批判したくなることもある。さらに「文化」のように人が無意識で行っていることについてはミスコミュニケーションの原因に気づくことが難しいので、気づいたときには関係が悪化してしまっていたこともあるかもしれない。しかし、異文化であることを認識して、自分の意識や行動を少々調整すれば、それが仕事での成功やその人との関係づくりに大いに役立つと思った。

では、この文化の違いを踏まえて、どのようにチームをまとめればよいのか。一番やりやすいのは、どの文化にあわせるか、ということではなく、筆者が推奨する通り、そのチームの「チームの文化」を生み出すことである。これはつまり、進め方や、進捗についてきちんと話し合って「認識を合わせておく」ことに他ならないと思う。

 

 

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・・・とここまでが会社の読書感想文の宿題でw、以下が個人的な感想です。

 

感想を一言で言うと、「それって文化だったんだ!完全に性格かと思ってたわw」だった。私は人が自分と「違う」ことに対してわりと寛容でいたいと思っているので、人が自分と違う言動をしても「まあ人間みんな違うもんな」と受け入れがちだが、「なんでアメリカ人は!」とか「なんで日本人は!」とかよく思う人は、読んだらかなりストレスが解消されるんじゃないかと思う。

 

要約に加え面白かったのは、文化ごとの相対性についても言及されている点だ。例えば私は「英語圏の文化」はこれまでくくって考えていた節があったが、どうも違うよう。スーパーハイコン文化の日本からみると、英語圏の国はひとえにローコン文化というとらえ方をしがちだが、同じ英語圏でもかなり差があると書いてあった。

例えばイギリスとアメリカだと、イギリスのほうがハイコンテクスト度が高い(含みを持たせる言い方をする)ので、アメリカ人はイギリス人の話を額面通り受け取り、何を言っているのか含みが読み取れずイラついたりする。そのためイギリスジョークもアメリカ人には通じないこともある。そういえば、アメリカ人はJust kidding(冗談だよ)とか良く言うけど、額面通りに言葉を受け取るアメリカではそう言わないと冗談と思われないということだ。なんでそれいちいち冗談だよって言うんだろう、言わんでもわかるでしょ?って思っていた私はめちゃめちゃ自分がハイコン文化出身だったことを感じた。

オーストラリアとアメリカだとオーストラリア人のほうが単刀直入というのも書かれてあったけどその通りで面白い。オーストラリア人ははっきりモノ言うなあ~wと思ったことが何回もある。でも意外とすごい良くてもIt’s not too bad(まあ悪くないよね)とか言うよね。謎…。

 

また今更だけど個人的に腑に落ちたことがある。アメリカ人が、なぜ話をするときに例をたくさん出すのかということだ。本書にアメリカの帰納的思考法が最もあらわされているものとしてCommon Law(英米法、判例法)があげられていた。裁判のときに先例を持ち出して弁護する、あれだ。あと、アメリカ人作者のノンフィクションを読むときに、たいてい「アリスは~で、~だった。ジョンは~こうした。」とか、いろんな人のいろんな事例が挙げられていることに、なんでこんなに例が多いんだ…例多くて読みづらっ…と違和感を感じていたのだが、あ~その思考法、ゆえにその表現になるのかと納得した。考えてみれば、普段の会議でも、アメリカ人は説得したいとき、たいてい例を出してくる。Let’s say, … (例えば‥)とかすぐ言い出す気がする。この本もすんごい事例ばっかりで、例によってアメリカ人が書いた本あるあるだった。若干話ずれるけど、翻訳自体はほんとにすばらしいと思いました。タイトルがちょっと難しい感じだから長く積読してあったんだけど、とても読みやすい。

 

加えて、思考法の違いは西欧とアジアの日付の書き方や住所にも表れているところが面白かった。アジアは中国的思考や宗教(場が行動に影響を与えると考えられていた)の影響から、包括的なものの見方をする。具体的には日本や中国は年月日とかくが、西欧は日月年とかく。住所も、日本だと国から書いて番地まで書くが、西欧は番地から書いて最後に州や国をかく。

 

ちなみにマインドマップを書いたらA4に収まらないので3章分くらい泣く泣く省略した。マインドマップうまくかけない。。