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読書感想文#10『荒木飛呂彦の奇妙なホラー映画論』荒木飛呂彦

 

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人気漫画『ジョジョの奇妙な冒険』の作者、荒木先生によるホラー映画論。原作は未読なのですが、最近アニメのジョジョにドはまりしていて、すっかりファンになった挙句、荒木先生にまで興味をもちはじめています(笑)5部を見ている途中だけど、図書館にあったから借りてきました。

ホラー映画を「現実や人間の暗黒面を描いた芸術作品」という荒木先生が、これまで見た洋画ホラーを50作くらい、カテゴリーに分けて紹介しているのですが、荒木先生の各ホラー映画についての解説力・分析力がすごいのに加え、それをうまく文で表現されている表現力もすごかったです。本当に頭のいい人なんだろうなと感じました。

解説では、まさかジョジョのあのシーン!?あのキャラ?!とアイデアにつながったのではと思えるような映画の要素を沢山あげられていて、ジョジョラーであれば、「ジョジョって荒木先生だから描けた漫画なんだな」…と膝を打つ文が多くあると思います。

例えば…

・主人公を容赦なく扱う『ミザリー

・街全体が住民に気づかれない間に浸食されていく、日常風景の中で登場人物に事件がおきていく『ブロブ 宇宙からの不明物体』

・超能力で未来を予知して世界を破滅から救おうとする『デッドゾーン

・女が好きな男を監禁して愛情たっぷりに看護しながら、出ていこうとすると攻撃してでていけないようにする『ミザリー

チンパンジーに襲われるサルが主役のアニマルホラー『リンク』

・もはや荒木先生もそのまま書いてた「僕も岸部露伴というキャラクターにこの探偵の要素をとりいれました」『ナインスゲート』

など。他もジョジョに出てくるようなモチーフは実は典型的なホラー要素だったんだなあと面白く拝読しました。あれだけのアイデアやストーリーを思いつけるのはこれまであれだけホラー映画からだったんですね。

 

ちなみに、私はホラー映画は嫌いじゃないのでたまに見ますが、これまで見た中で一番怖かったホラー映画は『ナイチンゲール』(豪・2018年)です。ストーリーはイギリス植民地時代のオーストラリアで、イギリス人将校に夫と子供を殺された女囚が、アボリジニの男性と一緒に復讐をしにいくというサイコバイオレンスです。

ここからネタバレなので見たい人は飛ばしてほしいですが、まず、映画の初っ端から女囚はイギリス人将校にレイプされながら目の前で赤ちゃんと夫を殺されます。その後女囚は一族を惨殺されたアボリジニ男性と仲間になりますが、アボリジニの人は存在するだけで、イギリス人たちにハンティングの鹿のように銃で撃ち殺されます。また、赤ちゃんを殺した男を見つけた女囚は、そいつを殺しますが、とっくにその男は死んでいるのに包丁で100回くらい刺し続け、血や内臓が飛び散りまくる残虐シーンなど、不快極まりないシーンが連発します。

「こんなに悲惨な映画はない」と思い、どうにか女囚が救われるようなシーンが見たいという一心で、吐き気を催しながらも最後まで見ました…まあ、若干救われるシーンはあったのですが、そのシーンまでに受けたショックでしばらく立ち直れませんでした。今でも各シーンをはっきり思い出せるくらいトラウマで、絶対に二度と見たくない映画なので全然おすすめしません。

いろんなホラーがありますが、私が一番怖いと思うのは人間です。ゾンビとか幽霊とか見えないものは確かに気持ち悪い感じはしますが、それよりも現実世界で実際起きてしまったことや、狂気の沙汰みたいな犯罪が一番怖くて。だから犯罪の実録ものとか刑務所ものとかよく見てしまうんですよね。この映画もなぜここまで怖く感じたかというと豪州でのイギリス人の白豪主義時代の蛮行がいかに酷かったか、オーストラリアにいたときに博物館や映画でたくさん見聞きして実際に起きたことだという感覚が強いというのが大きいとは思います。当時のイギリスは本当に大嫌いです。話がそれましたが、私の場合は「実際にこういうことがあった/あった可能性がある」という現実を感じるようなホラーに出会った時、やはり一番怖いのは人間だ、と恐怖します。そして、「自分と同じ」人間が、目を疑うような酷い行為をやってのけるところを見て「場所や時代が違えば、自分にもこういうことが起こったかもしれない。または自分がひどい行為をする側になったかもしれない」という感覚がよぎって怖くなります。でも見てしまうのはなぜでしょうか。荒木先生の言うようにホラー映画を見ることで「極限状態の予行演習をしている」のかもしれないし「心の中の恐怖を癒すための本能的な防御行為かもしれない」ですね。

とりあえず『ナイチンゲール』は荒木先生にもぜひ見てほしいな・・・本当に感想をきかせていただきたいです。「癒し」はないのでたぶんあんまり好きじゃないと思います。(じゃあ勧めるな(笑))

最後に、本書で紹介されていたたくさんの映画の中で、今後見たいと思ったホラー映画リストを自分メモ用に添えておきましょう。

悪魔のいけにえ

ミザリー

アイデンティティ

ファニーゲーム

今日はここまで~